実践者インタビューby山本雄幸
マーケティングに取り組むきっかけや、当時悩んでいらっしゃったことを教えて頂けますでしょうか?
2019年7月下旬に税理士登録し、8月から自分の事務所をスタートしました。
最初は、生活できるだけの収入を得られるのはいつになるのか不安でした。
顧問先がほとんどゼロの状態でスタートしたからです。
税理士は顧客獲得をするのが難しい業種だと思っていました。
なので、開業の半年前から開業のための準備をすすめていました。
1年目は赤字でもいいので、とにかく顧問先を作り売上を立てることを目標に頑張ろうと思っていました。
事務所の先輩や周りの方はみんな、独立する時に十分な顧問先を持って独立されていましたが私はほぼゼロでした。
2年目から普通に生活できるだけの収入を得ようと、色々情報収集していました。
営業先をどうやって見つければいいのか?
当時、商談して契約がとれるかどうかの前に、営業する先をどうやって見つければいいのかが全然わかりませんでした。
独立前に勤務していた会計事務所は紹介が多く、営業という営業はしていませんでした。
ですので、集客・営業の参考になる見本・モデルを知らないわけです。
紹介サイトという選択肢もあるのですが、紹介料も高いのでできれば使いたくはなかったです。
なんとか、自分で集客できる仕組みを持ちたいと考えていたのですが、知らない世界なので想像もできず困っていました。
それこそ、知り合いに紹介してと言うくらいしか思いつかなかったんです。
丁度、勤務していた会計事務所が相続分野に強くて、中の良い司法書士さんがいたのですが、その方におすすめしてもらったコンサルティング会社を始め、いくつか問合せて話を聞きにいきました。
その司法書士さんいわく、コンサルティング会社にお願いすれば、すぐお客さんは増えるよと聞いていましたので。(笑)
たしか、そこで色々情報収集しているとき、山本さんに出会ったと思います。
先生がお取組みされたマーケティング活動について教えて頂けますでしょうか?
まず、開業と同時に創業者を集客するホームページを立ち上げました。
そして、創業者向けのダイレクトメールをスタートし、また、ブログ記事にSEO対策用の記事を定期的に追加していくようにしました。
同時並行で、ミツモアというマッチングサイトに登録して、見込み客の発掘を常に行っていました。
開業1年目はこれで十分なお客様を獲得することができました。
HP、DM、マッチングサイトと丁度同じ割合で新規契約できていたと思います。
開業2年目から経理代行のホームページを立上げ、WEB広告も新たに始めました。
元々、税務のサービスはあくまでオプションで、経理・会計のコンサルティングや代行業務を中心に売上を作りたいという目標がありました。
山本さんに相談したら勝算ありそうだったので、思い切って念願の経理代行サービスの普及に取り組みました。
紹介だけに頼らなかった理由
知り合いからの紹介は積極的に受けませんでした。
紹介で増やすのはあまり気乗りがしなかったんです。
紹介だと、色々遠慮してしまう部分が出て、顧問料が友達価格になってしまう懸念や、言いたいことが言えない、なあなあな関係になってしまうなどを懸念していました。
一つの顧問先で価格を下げてしまうと他で下げざるを得ないので、そういうしがらみがないお客さんを作っていきたかったんです。
紹介で増えたお客様も2、3件ありますが、値下げしないことは特に注意していました。
紹介意外で、直接顧問先を獲得することに重きをおいていましたので、1年目から営業の目標を進めて取り組んでいました。
毎週、目標の営業件数(面談件数)を決め、その通りに予定が入るよう気を付けてました。
先程もお伝えしましたが、HP、DM、マッチングサイトの3つからの予定で常に埋まっていました。
最初はDMのお問い合わせが多かったのですが、途中からHPからの問合せが増えてきて、DMは打つのを辞めてしまいました。
ある程度の売上も立ってきたので、2年目に入って、ブログ記事の更新も少しペースが遅くなっています。
今は、経理代行の営業や、社員の研修に力を入れています。
マーケティングで苦戦した時があれば、お話をお伺いさせて下さい
DMのお問い合わせの方が、初回面談でご契約となる方が少なく苦労しました。
他も見てみますという相見積もりが多く、値段交渉もありました。
契約率は3割くらいだったと思います。
一方、HPを見た方からのお問い合わせは、契約がよく決まりました。
契約率は7~8割くらいだったと思います。
値段交渉は一度も無かったです。
DMは発送も大変でしたので、契約率も低かったしそれで辞めてしまいました。
配布したいエリアに、毎月200くらいの創業者がいたのでそこにDMを送りました。
ラクスルを使って、印刷から発送まで全てやりました。
初月は問合せが0だったのですが、3か月目以降問合せが増え始め、DMからは最終的に2,3件くらいの問合せが出るようになりました。
6回のシリーズのDMを、1月に1通×6ヶ月かけて送る予定でした。
6回シリーズだったのですが、問合せが出るようになったので、3回までしか送りませんでした。
ただ、それも送付が面倒になってしまい、顧問先が増えてからは送付を辞めてしまいました。
なので、DMから増えた顧問先は初年度で2件だったと思います。
問合せはもっとあったのですが、独立初年度だったので、営業も上手ではなかったんですよね。
獲得した2件も、営業の流れがつかめ始めた年末に獲得できていたと思います。
相見積もりサイトの営業に苦戦・・・ しかし、お客様目線の営業で契約できるように
当時、月10万円くらいかけて、ミツモアという比較見積もりサイトに登録しました。
かなり営業先は増えたのですが、「価格に厳しい」「他も見たい」ということで、契約に非常に苦労しました。
まず、面談のアポを取るまでが苦労しました。
ミツモアから見積もり依頼が入った旨の問合せがくると、こちらからチャットで面談しましょうと送るのですが、返信が無いことがほとんどでした。
山本さんからアドバイスもらって、
①見積もり依頼が入ったらすぐチャットを送ること
②チャットを送ったら、すぐ電話すること
を徹底したら、すぐにアポが取れるようになりました。
笑い話ですけど、とにかくスピードを大事にしていたので、相手の情報を良く見ずにすぐ連絡を入れていた時があって、その時はさすがに相手の社長から、「問合せの内容を良く見てないんですね」って笑われたこともあります。
電話番号がわかる人とわからない人がいるんですけど、わからない人は全然面談まで結びつかなかったですね。
チャットで送ってもまったく返信が無いんですよ。
電話があれば、まずはお電話で悩みを最初に聞いて、そこで答えを出すわけではなく、お手伝いできそうなので、一度会わせてくださいという切り口で、面談の機会を作っていました。
あと、工夫していたのは、ミツモアは値段ありきでコンタクトしてくるので、自分の見積もりの最下限価格を最初思い切って下げておきました。
ミツモアは他も見ているので、低くしないと土俵にのれないんですよね。
最低限のサービスで低く見積もりしておいて、あとでオプション乗せて単価を上げるという方法を取っていました。
興味を持ってもらってから、悩み聞いていて単価アップしていくという感じです。
たしかこれも、営業が決まる度に山本さんに相談していて、その中でアドバイスしてくれたことだったと思います。
ただ、すぐに電話でアポを取ることや、営業トークの見直しをして、契約できるようになってきたところで、ミツモアが値上げをするということで、結局利用を辞めてしまいました。
比較紹介サイトから撤退。自社でのネット集客のみに力を入れる
ミツモア(比較紹介サイト)を使うのは辞めた方がいいと、山本さんから何度かアドバイス頂いていたので、ある程度のお客さんが増えたら辞めました。
自分が適正だと思える価格での契約が難しく、良いパフォーマンスが出せると思わなかったんです。
値下げして、それでも値下げ前と同じ品質でサービスするっていうのは、どんな商売でも難しいですよね。
値下げして顧問先が増えても、あとあと自分が苦しみますので。
やっぱり正当な値段で満足して頂けるようにサービスしていかないと、結局は解約されちゃう事務所になってしまいます。
ミツモアで学んだことは、なるべく比べられる状況にはしない方がいいということです。
ミツモアは、開業初年度でお客さんを増やさなければいけないタイミングではありがたいかもしれませんが、ずっと続けるサービスではないと思いました。
独自の直接集客できるものを持たなければいけないと改めて思いました。
結果、今はホームページの集客に注力しているわけですが、相見積もりされることはほとんどありません。
値段もこちらの希望を言えば、OKしてもらっています。
値段第一では考えていないお客さんに対して、ちゃんと思いを伝えればわかってもらえるんですね。
週に3件以上の営業先を常に確保していた独立1年目
独立1年目の年末は、めちゃくちゃ営業してました。
元々、週に2件は営業を入れようとしたのですが、結局週に3件面談が入っていました。
ホームページ、ミツモア、DMで毎週3件以上の営業先を作っていました。
前の会計事務所の手伝いもあったので、決して暇なわけではなかったのですが、自分の事務所を早く確立しないとと焦っていたのを覚えています。
2020年から力をいれている経理代行事業についてお伺いさせてください
元々、経理代行のご経験はあったのですか?
実は、まったく経験がありませんでした。
2020年に、税理士変更のご相談をお受けした1社様から、経理代行もやって欲しいと相談があり、そこで始めて経理代行業務をスタートしました。
相談の内容は、経理担当がfreeeを使いこなせず、中身がぐちゃぐちゃで大変だから助けて欲しいというものでした。
元々依頼していた税理士さんも、freeeがあまり得意ではなかったそうで、それでご相談頂いた形でした。
デザイナー関係の業務に携わっている方が、片手間で経理をやっていたため、対応できなくなってしまったそうです。
決算月も迫っていたためかなり急いでいた様子で、もう、経理から丸ごと代行してもらえないか?というご相談でした。
これまで、経理代行の実績は無かったのですが、思い切ってお仕事をお受けすることにしました。
これが、凄く感謝して頂き、経理代行という仕事の魅力に気づきました。
月額10万円の契約スタートし、今は月額12万円を頂いています。
振込みと会計の記帳、金融機関の対応が主なサービス内容です。
給与は元経理の方に、引き続きやって頂いていますが相談などはお受けしています。
見積もりを出したときは、見積もり金額に少し不安も感じましたが、思いのほかすんなり決めてもらえました。
たぶん、決算を控え、緊急性があったからだと思います。
また、元々経理やっていた従業員の方が振込みのミスがあったようで、そういった原因から急いで専門家に任せたいと思っていたようです。
その会社がベンチャー企業でもあるため、事業内容が日々変わるため、スタートしてみると意外と大変でした。
CFOのような形で今は入っており、業務内容と単価も見直す相談をしながら進めさせて頂いています。
この、初めての経理代行のクライアント様ができたときがコロナがはじまったばかりのころでした。
これはもしかしたら、固定費に課題を持つ社長様も増えてくるし、経理代行がより求められるかもしれないと思いました。
そこで、まだ1件の実績しかありませんでしたが、思い切ってホームページを作り広告もかけて、大々的な集客に踏み切りました。
実際に、経理代行をネットで集客してみていかがでしたか?
開始早々、ホームページからの問合せで早速2件目、3件目の経理代行を決めることができました。
両方とも月10万円以上の案件で、ホームページからでも年間100万円以上の案件が取れることに驚きでした。
更に今年に入っては、年間1千万の報酬を超える案件の問合せも出ており、1件は無事決まり、もう1件は営業中ですが、こちらも決まりそうです。
営業で困ることはありませんでしたか?
あまり困ることはありませんでした。
むしろ、会ったらほとんどの確率でうちに決めて頂けてます。
まず、お問い合わせの段階では、既に他社にも問合せをしているようですが、うちが一番最初にお客様と面談するようにしていまして、面談できたらほぼ受注が決まっています。
お問い合わせくださった方は、面談すると時間も取られるし体力も消耗しますので、最初に面談した方に違和感が無ければすぐ決めてくれるということがよくわかりました。
比較サイトも使ったことがありますが、比較サイトと比べると、自社サイトからのお問い合わせは仕事が決まりやすいです。
自社サイトを見たうえで電話をくれる方は、最初から契約を視野に入れた上でお問い合わせしてくださっているようでした。
ちなみに、これまで一度も見積もりに対して値下げを要求されたことはありません。
経理代行でお問い合わせを下さる方の特徴はどんな方ですか?
これまでお問い合わせ頂いた中では、「経理が辞める予定で困っている」「経理を身内がやっていて外部に出したい」といった内容が多かったですね。
規模は売上が数億円の規模が多いですね。
ただ、売上数十億円の会社様からもお問い合わせがくることもありますし、逆に、億までいかない売上の方からのお問い合わせもあります。
横浜という立地柄なのか、企業の規模はかなり様々です。
想像以上に大きな規模の会社から来ることもあって、お断りしたケースもありました。
これまでの経理代行の営業で失敗したことはありましたか?
ホームページでの集客をスタートして、一番最初にお問合わせ頂いた時ですね。
面談の時、提案というより、料金表をすぐ見せてただ見積もりしただけの営業になってしまい、失注しました。
その反省を活かして、相手の深いところにある悩みのヒアリングから、相手にとって喜ばれる提案は何かを考えて提案する、コンサルティング営業スタイルにしてから、ほとんど契約できるようになりました。
経理代行事業について、今感じている課題はありますか?
まずは、規模の大きな問合せが増えてきた中で、対応できる人員体制を築かないともったいないということに課題を感じています。
採用の強化やメンバーの育成など、体制作りにこれからは力を入れていきたいです。
また、資料請求だけで終わってしまう方もいて、その方たちはもったいないと思っています。
面談できれば契約できる自信があるので、その方たちにどうやって面談まで進んでもらうかは考えなければいけません。
とりあえず、資料請求があったあとにすぐアポどりの電話をすることと、今後メールマガジンなどを通して、継続的に情報提供していくなかで、いざ相談したいとなったときに思い出してもらえるように仕組みをつくりたいと思います。
これまで、様々なマーケティング活動をされての感想などお伺いできますでしょうか?
開業当初は先が見えず、不安しかありませんでした。
でも、営業活動を通して、たくさんの社長様とお話する中で、社長様が何を求めているのかだんだんわかってきました。
そうすると、どうすればお客さんが増えるか道筋みたいのが見えてきて、次第に不安が消えていきました。
仕事が取れるかどうかは別として、たくさんの社長様に会って声を聞くことの大切さに気づきました。
ゼマーケと出会って何か変わったことはありましたか?
独立前は会計事務所の営業に関することは一切やったことがなかったので、どうやって営業したらいいのか全くわかりませんでした。
自分の想像だけでやってたんですけど、うまくいかないことばかりでした。
そこで山本さんと出会って、アドバイスをもらう中でお客さんも増えてきて、やっぱりマーケティング・セールスの経験がある人からのアドバイスは大切だなと思いました。
営業経験の無い自分だけでは想像できないアイデア・発想に出会い、実践できたのはとてもありがたかったです。
営業してれば失敗もあります。
その失敗の経験について、一緒に改善のアイデアを出して実践する中で、自信もついてきました。
山本さんの経験と、第三者的な意見から、自分のやるべきことが教えてもらえるので、とても助かっています。
今後のharbors様の展望について教えて下さい
まず、主力の経理代行事業についてですが、従業員が多く、規模の大きな会社様にもしっかり対応できるよう、体制をつくりたいです。
また、今は経理業務の丸投げが多いのですが、一部の経理業務だけでも外注したいというニーズも感じてまして、部分的な経理代行にも対応できるサポートを作っていきたいです。
とにかくたくさんの会社様に経理業務の支援から入り、一度入った会社様とは、少しずつお取引を拡大させていきたいです。
税理士事務所としては、あまり大きくするつもりはなく、経理代行の会社をどれだけ成長させていけるかチャレンジしたいと思っています。
最近、山本さんのような身軽な事業スタイルの会社も増えてきて、そのような会社は近い将来、税理士さんいらずで申告できるようにもなってしまうかもしれません。
決算申告のサポートをメインとする税理士事務所としては、これから厳しくなってしまうような気がしています。
そこで、経理代行事業を中心に、一つ一つの会社様に深く入って、最終的にはCFOという形で一緒に会社を成長させていくことを頑張りたいと思っています。
その他の事業についてですが、父親との縁から人材紹介業とホテル事業も検討しています。
また、経理人材の派遣や、経理に関わる研修サービス、DX支援サービス、RPA支援も中長期的には検討しています。
そのために、まず経理代行事業のクライアントを増やし、クライアント毎に他にどんな課題があるかをヒアリングしながら、これからの事業のアイデアを検討していきたいと思っています。
インタビューにご協力頂き、誠にありがとうございました!(山本)
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