ー目次ー
1.独立・開業前、一番最初に確認して頂きたいこと
おそらく、独立・開業をされたいということは、現状に不満があるからだと思います。
理想と現状のギャップにご自身が耐えられず、アクションを起こしたがっている状態です。
理想を手繰り寄せるために、まず考えなければいけないことがあります。
それは、「どんな状態が理想か?」を具体化することです。
そうしておくと、後で具体的な戦略を考える際に、理想から逆算して、取るべきお客様や、提供するサービス、新規獲得の戦略を検討することができます。
「こんなはずじゃなかった」という後悔にならないよう、ぜひ、ご自身の理想がどんな状態なのか?一緒に、お考え頂けましたら幸いです。
1-1.自分の理想的な状況を考える
突然、理想を考えろと言われても、難しいかもしれません。
そこで、3つの判断軸をご紹介します。
それが「お金・時間・価値観」です。
さらにそこに、3つの切り口「仕事・家族・自分」を組み合わせます。
そこにできた9マスに、理想の状態を書き込んでみましょう。
これが、先生の理想を表すシートとなります。
1-2.A~Cの3つのパターンを想像してみる
次に3パターンを想像してみます。
A ものすごくうまくいくパターン
B 独立・開業前よりは理想に近づいたパターン
C 独立・開業前よりうまくいかないパターン
この予測は、先程の9マスに書いて頂いても結構ですし、頭の中でだいたい想像するだけでも構いません。
3パターン想像することで、先生の独立・開業後の未来がより具体化され、漠然とした不安から、やるべきことの明確化につながります。
1-3.Cパターンが1年続いた時にも耐えられる準備と覚悟を
もし、Cパターンが一年続いてしまった時のことを想定しておきます。
Cパターンでも1年間は耐えられる資金を準備しましょう。
Cパターンでも家族が協力・応援してくれるように理解を得ておきましょう。
Cパターンでも自分が我慢できるように覚悟をしておきましょう。
Cパターンが1年続いてしまっても、準備からの余裕や心構えがあれば、独立・開業は成功したも同然です。
士業に限らず、オーナーシップを持ったビジネスマンは強いです。
1年もあれば、Bパターンか、早くてAパターンにいくことは十分可能です。
2.税理士事務所の独立・開業に向けた準備と注意点
次は、税理士事務所の独立・開業までの大まかな流れと注意点をご紹介させて頂きます。
2-1.実務経験2年間以上。ご自身が得意・好きになれる実務を探す
税理士として開業するためには、税理士登録が必要です。
そのためには、試験の合格と税理士事務所での2年以上の経験が必要です。
ちなみに、実務経験は1つの事務所だけではなくとも、複数の事務所で大丈夫です。
そこでは、ぜひ、色々な実務に触れてみられるのが良いかと思います。
ご自身の得意な業務や、好きな業務が見つかると、独立後の強い武器になります。
得意や好きの感情があると、知識・ノウハウのアップデートや、クライアントへの提案など、アウトプットが捗ります。
総じて、ご自身のスキルアップも継続的に実施できます。
2-2.税理士のご登録。税理士登録関係でよくあるごたごた
税理士試験の合格と、2年間の実務経験を経たあとは、税理士のご登録が必要です。
複数の必要書類を税理士会に提出し、また、面接もあります。
ちなみに、税理士登録時に支払う費用が発生します。
勤務時代に税理士登録される場合、費用を事務所が払うか、個人が払うかどうかは、とてもデリケートな問題です。
事務所に負担して頂いたあと、すぐ独立してしまうと、事務所側としては面白くはありません。
事務所に登録費用を払って頂く際、独立の意思がある場合は、正直にお伝え頂いた方が良いかもしれません。
開業後のごたごたや、事務所の所長様との関係性悪化につながる可能性があります。
2-3.開業資金の準備。いくらみるべきか?
顧客ゼロからスタートする場合は、できれば、月間損益分岐点売上高の6ヶ月~1年分をご用意頂くことをおすすめしています。
月間損益分岐点売上高とは、毎月の経費と毎月の生活費の合計額としてお出しください。
新規で増えていく売上もありますが、スポットでの出費や、新規獲得ペースが想定を下回った場合も踏まえ、6ヶ月~できれば1年分をおすすめしています。
できるのなら、決算料は顧問料に組み込んで前倒しで回収できるようにしていくなどの工夫もおすすめです。
固定費を上げすぎず、また、変動費する努力をするなどの工夫も、気持ちがとても安心します。
3.開業前からスタートダッシュ!マーケティングプランの検討と実施
損益分岐点売上高をなるべく早く越えて頂くために、事前にマーケティングプランを検討し、許されるなら、勤務事務所の業務時間外で、アクションし始めることがおすすめです。
以下の順番でプランを決めアクションを実践していきます。
3-1.理想のクライアント=ターゲット決め
まずは、理想の顧客像を決めて頂きます。
どのような方をクライアントにしたいでしょうか?
これまでお世話になったクライアントで大好きな方はどんな方ですか?
業種は?規模は?価値観・お人柄は?年齢は?性別は?考え方は?
この理想の顧客像のことを、マーケティング用語でペルソナと言います。
3-2.マーケティングファネルの検討
理想の顧客像の悩みを解決するための価値の階段を設計します。
具体的には
・リードマグネット(見込み客獲得)
・フロントエンドサービス(顧客獲得)
・バックエンドサービス(収益獲得)
という3段構えをご用意頂くことがおすすめです。
税理士様の場合は顧問契約・コンサル・経理代行をバックエンドサービスにされる方が多いですが、もちろんこのほかにも保険提案やM&Aなど様々あります。
フロントエンドサービスは、バックエンドにつながる顧客獲得を目指すサービスです。
セミナー、研修、スポットサービス(融資、事業計画、節税診断など)などを検討します。
リードマグネットは、集客サービスやバックエンドサービスに興味・関心のある方に反応してもらうための、ハードルの低いオファーです。
オファーとは取引を指します。
例えば、無料レポート、無料相談、無料動画セミナーなど、無料のものが多く使われます。
3-3.セールライティング
先程作ったリードマグネットと、フロントエンドサービスの魅力を伝える文章を作成します。
これを、セールスライティングと言います。
ライティングした文章は、ページか、開業前ということでページが難しければ、資料にまとめ、知人・友人・SNSなど、告知できる範囲で宣伝を初めていきましょう。
お勤めの場合は、勤務事務所に許される範囲での活動に留めましょう。
フィードバックにより、オファーの内容や、セールスライティングの内容について、改善点が見つかりより磨かれていきます。
また、告知する中で、見込み客の獲得と、早ければ独立後の契約確約もとれていきます。
4.開業を成功させる脱安売り4つのポイント
ここ数年で、顧問料をかなり安く打ち出す税理士さんが特に増えてきたような気がします。
先生の近くに、ホームページで顧問料を安く打ち出す税理士さんが出てきたら焦りますよね。
顧問先があっちの事務所に流れたらどうしよう・・・
周りより安くしないと契約はとれないのかな・・・
これから新規が増えにくくなるかもしれない・・・
そう、悩んでしまう税理士さんもいるかもしれません。
でも、安心してください。
防衛策はちゃんとあります。
実際私も、クライアント様からそのようなご相談をたくさん頂きますが、むしろ顧問料をなるべく上げて頂くことを提案しています。
そこで今日は、実際に税理士さんに活用頂いている「4つの価値」というフレームワークをご紹介させて頂きます。
4-1.サービス内容と価格だけで契約は決まらない
まずご安心頂きたいことがあります。
それはサービス内容と価格だけを判断材料に契約は決まらないということです。
先生が相手に提供できる「価値の総和」と価格を比べて、納得してもらえた場合に、契約して頂くことができます。
この「価値の総和」ですが、サービス内容だけが相手が感じる価値ではありません。
サービス内容は便益価値といって、4つある価値の1つにすぎません。
先生は残り3つの価値で勝てば良いということになります。
マーケテイングで、この3つの価値を作り出りだすことが大切になります。
4-2.相手は何にお金を払ってくれるのか?4つの価値とは?
まず、価値には大きく2種類あります。
①サービスが自分の役に立つ(機能的)
②サービスを受けると心が満たされる(情緒的)
の2つです。
また、別の軸から見て、価値は大きく2種類にわけられます。
①目に見えてわかりやすい価値(顕在的)
②目に見えてはわかりにくい価値(潜在的)
の2つです。
それぞれの軸をかけ合わせて4象限に区切るとこんな感じになります。
これはソフトバンク株式会社のメディア統括部長井上大輔氏が書籍「マーケターのように生きろ」で紹介されているフレームワークになります。
ちなみに、この「マーケターのように生きろ」という書籍ですが、人生を豊かにするためのバイブルとしても参考になるので、ぜひお手に取ってご覧頂けましたら幸いです。
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全ての税理士さんに役立つ名著だと思います。
それでは、4つの価値それぞれについてご説明させて頂きます。
4-3.便益価値
便益価値とは、相手が受けられる機能的な価値で、目に見えてわかりやすい価値です。
サービス内容に掲げられる内容は便益価値です。
顧問料の安い税理士さんは、便益価値を主として、他の事務所より安く提供しますよと宣伝していることが多いです。
4-4.保証価値
保証価値とは、相手が受けられる機能的な価値で、目に見えてはわかりにくい価値です。
例えば、
「この人に依頼しておけば、しっかり仕事してくれそうだな」
「この事務所に依頼しておけば、いざ困ったときに助かりそうだな」
と思ってもらえたとします。
そこには、「機能的な価値を保証してくれるという価値」を相手が感じているのです。
4-4-1.素早い対応が保証価値につながり高単価案件でも契約率70%以上の税理士さんの話
ゼマーケのクライアント様に、経理代行というサービスをネットで集客している先生がいます。
受注の単価は月額10万円~100万円と単価が高いサービスなのですが契約率が70%以上という驚異的な数字をたたき出しています。
決して安売りしているわけではなく、競合よりも高い見積もりの場合も多々あります。
それなのに、契約率が70%以上なのです。
高い契約率の理由の1つが「素早く丁寧な連絡」からくる「サービスへの安心感」です。
相見積もりされても、競合の対応が遅いことから、この先生への保証価値が高まり契約につながっています。
面談の時に「他にも問い合わせたけど、他からの連絡がとても遅いんだ。先生が一番早かったし、連絡も丁寧で信用できる」と言って頂けるそうです。
4-4-2.地域に根差した資金調達ネットワーク・実績を武器に安い税理士さんに勝っている話
ゼマーケのクライアント様に、資金調達支援をネットで集客している先生がいます。
問合せは創業社長からが多いのですが、個人の場合で年間35万円以上、法人の場合で年間50万円以上での顧問料で契約を獲得しています。
創業したばかりの社長様向けの顧問料だと、これらの半分の顧問料で打ち出している税理士さんも多いと思います。
実際、相見積もり先が激安の先生だった場合も多々ありました。
しかし、それらの相見積もりをことごとく勝ち上がり、先程ご紹介した単価でずっと顧問契約を増やしています。
ポイントは、ご自身が長年資金調達支援に取り組んできた実績と、地域の金融機関と築いてきた信頼関係をしっかりお伝えし、価値を感じてもらうことです。
資金調達は、一度だけでは終わらないケースが多く、会社を続ける限り次の資金調達を検討するタイミングがきます。
そこで、この先生にお願いしておけば、次の資金調達も大丈夫という安心感が価値につながっています。
先生のサービスを、安心して利用してもらえる理由作りを始めてみましょう!
そして、言葉にし、相手に伝えたり、相手とのコミュニケーションの中で体感として伝えることができると、サービス内容と価格だけで判断されなくなります。
4-5.評判価値
評判価値とは、相手の心を満たす情緒的な価値で、目に見えてわかりやすい価値です。
例えば、先生のサービスを検討する時に
「この人に依頼すると、自分の評判が上がりそうだな」
「この事務所のクライアントになっている自分が誇らしく感じられそうだな」
と思ってもらえたとすると、それは評判価値があるということになります。
これは、一朝一夕では作るのがなかなか難しいため、コツコツ取り組むしかありません。
私たちゼマーケもこの価値を提供できるように日々頑張っていますがまだまだ全然です。。。
ただ、あきらめてしまわずに、まずは取り組み始めることがとても大切です。
なぜなら、時間の長さは評判価値に成りえるからです。
私たちが他の事業に浮気せず、コツコツと税理士さんのマーケテイング支援に取り組んでいるのも、長い目で見て評判価値を築き上げていきたいという思いからです。
先生にも特定の得意分野を掲げて頂き、長年続けて頂くとそれが評判価値に成りえます。
評判価値を短期間で作る工夫としては、見込み客に既に評判のある方、組織、団体の力を借りるという方法もあります。
例えば
・金融機関、商工会、業種団体などで講演・タイアップ企画をさせてもらう
・権威のある組織に所属する
・ターゲットにとって魅力的な人物といる様子を見せる
などです。
日本でも一定のブランドのある日本政策公庫さんは、税理士さんと1日公庫というタイアップ企画をやってくれます。
また、商工会、業種団体は会員向けのイベントのネタを常に探しています。
まずはそういった身近な団体・組織から攻めて頂くと良いかと思います。
4-6.共感価値
共感価値とは、相手の心を満たす情緒的な価値で、目に見えてはわかりにくい価値です。
共感価値は、先生の価値観に相手が共感してくれた際に感じてもらえる価値です。
評判価値は相手にとっての「アクセサリー」ですが、共感価値は「おまもり」的な存在です。
人は、自分の価値観に沿って行動しているとき、安心感や充実感、達成感を味わいます。
相手が先生の価値観に共感してくれた場合、相手は先生のサービスが実現してくれる未来に期待し、価値を感じ、先生と契約してくれます。
自分の価値観を知っている人は強い
そのためにはまず、ご自身の価値観に気づく、知ることが必要になります。
そこで役に立つのが、以下の質問です。
1.「こんなクライアントが増えたら幸せだ」と思う理想のクライアントを想像してみてください
2.その人はどんなことで悩んでいますか?
3.その悩みをどうやって解決してあげたいですか?
4.その人をどのような理想の状態に導いてあげたいですか?
5.そもそも、なぜ、その人の悩みを解決してあげたいと思いましたか?
これらの質問の答えは先生の価値観にとって大事なヒントですので、ぜひ参考にしてみてください。
先生の価値観が繰り返し相手に届く仕組みが持てるとベストです。
少ない時間の中で、相手に先生の価値観を伝え、共感してもらうのはなかなかハードルの高いことです。
そこで、メルマガやブログ、SNSなどを通して、先生の発信する情報に繰り返し触れてもらうことが大切になります。
先生が行う情報発信には、先生の価値観が少なからず含まれています。
継続的な情報発信を通して、見込み客の方々と共感し合える関係が作れる仕組みを持って頂くことをとてもおススメしています。
まとめ
今日は、税理士様の独立・開業前の準備やポイントと、値決めについて4つの価値というフレームワークをお伝えさせて頂きました。
サービス内容と価格だけで契約は決まるわけではありません。
サービス内容と価格を比較して感じる価値は「便益価値」といい、4つのうちの1つの価値に過ぎないということを今日、知って頂けたのではないかと思います。
先生は、残り3つの価値、「保証価値」「評判価値」「共感価値」のいずれか、又は複数、できれば全てを作れるように取り組むことで、金額を安く打ち出す税理士さんに勝つことができます。
「保証価値」「評判価値」「共感価値」に使える材料がご自身にないか、探して頂けましたら幸いです。
多くの場合、うまく表現できていないだけで、既に材料があったりします。
税理士さんの例をあげながらお伝えしましたが、今日の「4つの価値のフレームワーク」は、ほとんどの業種で使えます。
先生自身が実践しながら、顧問先で同様の悩みに困っている方がいたら、その知識をシェアしてあげてください。
著者Profile
解説:山本雄幸
マーケティング支援の㍿VentureForward代表取締役。
元々は税理士様の集客支援からスタートし士業、コンサル業様のサポート実績多数。
税理士業界では累計3,000件以上の顧問先獲得を支援。
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