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税理士として独立を決意したとき、最初に気になるのが開業にかかる費用や必要な資金ではないでしょうか。
税理士として開業する際には様々な経費が発生します。これらの費用を把握し、計画的に準備することが重要です。
1.事務所開設の費用
まず最初に考えるべきは、事務所の設立費用です。
開業するにあたり、どのような形で事務所を構えるかは重要な判断となります。
その選択肢として主なものは、自宅開業、レンタルオフィス、賃貸事務所の三つとなります。
事務所をレンタルする場合、立地や物件の大きさによりますが、敷金、保証金、初月の家賃を合わせた金額が必要になります。
都市部であれば一般的には約50万円程度が必要とされています。
ただし、自宅を事務所として利用することにより、この部分の費用を大幅に抑えることも可能です。
また、共同事務所を利用することも費用を抑える方法として考えられます。
それぞれには一長一短があり、事務所の選択は開業スタイルや経営方針により変わるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
1-1.自宅開業
自宅開業は、最初の開業費用を抑えることが可能な選択肢で、リスクを減らす方法として有効です。自宅をオフィスとして使用する場合、家賃や光熱費、通信費などを節約できます。これは初期投資を抑えるための有効な手段といえるでしょう。
加えて、通勤時間を節約することができ、時間的な余裕を持つことが可能です。
ただし、自宅開業には欠点もあります。
自宅と事業場が一緒になることで、プライベートと仕事の区別がつきにくくなる可能性があります。
また、自宅が事務所として使えるかは住んでいる地域の条例やマンションの管理規約等によります。
また、ビジネスのイメージや訪問客への配慮などから、外部からの評価も考える必要があります。
1-2.レンタルオフィス
レンタルオフィスは、個別のオフィススペースを月額で借りる形態です。
レンタルオフィスの利点は、初期費用を抑えられることと、必要に応じてスペースの拡大や縮小が容易であることです。
また、一部のレンタルオフィスでは、共用の会議室や受付、コピー機などの設備を利用できる場合もあり、新規開業者にとっては大きなメリットとなります。
しかし、レンタルオフィスは自由度が限られることが欠点となる場合があります。
オフィスのレイアウトや内装に制限があること、他のテナントとの共存に配慮する必要があることなどが考えられます。
1-3.賃貸事務所
賃貸事務所は、自分専用のスペースを持つことができます。
自由なレイアウトや内装、24時間利用可能など、自己のブランドを確立しやすい環境を提供します。
自分だけの空間を確保できるため、業務に集中することも可能です。
しかし、賃貸事務所の場合は初期費用が大きくなることが多いです。
敷金や礼金、仲介手数料などを考慮すると、自宅開業やレンタルオフィスと比べて高額になります。
また、賃料も毎月一定額が必要となり、一定の利益を上げることが求められます。
以上のように、自宅開業、レンタルオフィス、賃貸事務所という三つの選択肢は、それぞれに長所と短所があります。
自分のビジネスモデルや資金計画に合わせて選択することが重要となります。
それぞれの選択肢によって開業費用は大きく変わりますので、予算計画にも十分に影響を与える要素となります。
開業準備の一部として、自身の状況と目指すビジネス形態に照らして最適な選択をすることが求められます。
2.設備品・事務用品
次に、事務所で必要となる事務機器や事務用品の費用です。
ここには、机や椅子、パソコンやプリンターなどのオフィス機器、電話機やFAX、ファイルキャビネットなどの収納家具、紙類や筆記具などの消耗品などが含まれます。
これらは中古品を活用することで、初期費用を抑えることも可能です。
ここでも、総額として約10万円程度が必要とされています。
税理士事務所を運営するには、さまざまな備品が必要です。
これらの備品は事務の効率化やクライアント対応に役立つものばかりです。以下に、主な必要な備品をご紹介します。
2-1.設備に関する備品
基本的なオフィス備品として、机や椅子、書棚などが挙げられます。
これらは作業スペースを整えるために必要不可欠です。
デスクは作業スペースの広さや収納スペースの大きさに注意しながら選ぶと良いでしょう。
応接スペースを設ける場合には、ソファや応接テーブルも考慮しましょう。
2-2.オフィス用品
さらに、事務作業や会議に役立つオフィス用品も揃えましょう。
文具類やファイルボックス、ホッチキスやホワイトボードなど、作業効率を上げるための道具があります。
必要に応じて、スキャナーやデータストレージなどのデジタルツールも検討しましょう。
2-3.その他
最後に、オフィスのイメージやクライアント対応に関わるアイテムも忘れてはいけません。
名刺や封筒、ロゴデザインなどは、プロフェッショナルな印象を与えるために重要です。
また、安全対策として、シュレッダーなどの情報処理機器も準備しておくことをおすすめします。
これらの備品は、税理士事務所の円滑な運営に不可欠です。
必要な備品を選ぶ際には、予算とニーズを考慮し、質の高いものを選ぶことが重要です。
自身の事業計画に合わせて必要な備品を整えましょう。
3.IT機器(PC、システム、ソフトウェア)
現代の税理士業務では、PCや各種ソフトウェアが必要不可欠です。
パソコンやプリンターなどのIT機器も重要です。
税務や会計の作業には専用のソフトウェアが必要となりますので、パソコンは高性能かつ使いやすいものを選ぶことが大切です。
また、プリンターは書類の印刷やコピーに使用するため、多機能なものが望ましいでしょう。
これらの初期投資として約10万円が目安とされています。
税理士業務に必要なソフトウェアは種類も多く、その価格も様々ですので、ここは自分の業務スタイルや顧客ニーズに応じて選びましょう。
また、顧問先のデータとの連携や使いやすさが重要となりますので、システムの選定には十分な注意が必要です。
クラウド型のシステムを選ぶことで、将来的な税制改正などにも柔軟に対応できることから、クラウド型も検討の一つとなります。
4.広告宣伝費用
税理士事務所の開業において、営業活動ツールの制作費も重要な要素です。
営業活動ツールは、事務所の存在をアピールし、顧客獲得につなげるための重要な手段です。
開業初期には広告宣伝費用が一定の費用として必要となります。
具体的な広告宣伝方法としては、地元の新聞や雑誌への広告、ホームページの作成、チラシの配布、SNSやブログの活用などが考えられます。
顧問先への郵便のみであれば少額で済むかもしれませんが、それ以上の宣伝を行う場合は約10~50万円が目安となります。
以下に、代表的な営業活動ツールとその制作費について紹介します。
4-1.ホームページ関連
まず、ウェブサイトの制作費用です。
インターネットの普及により、多くの人々が事前に情報を検索するため、ホームページは重要な営業ツールとなります。
制作費は、ウェブデザインやコンテンツ作成、ドメイン登録、サーバー利用料などにかかる費用です。
また、アクセスアUPに向けたコンサルティング費用や、ドメイン名・サーバーの維持費も考慮に入れる必要があります。
一般的なウェブサイトの制作費用は、10万円から30万円程度が目安となります。
4-2.チラシやパンフレット、名刺など
次に、チラシやパンフレットの制作費用です。
チラシやパンフレットは、顧客に直接手渡しすることで事務所のサービスや特徴をアピールします。
制作費用はデザイン、印刷、配布などにかかる費用を含みます。
制作費は、デザインの複雑さや印刷の仕様によって異なりますが、一般的には10万円から数十万円程度が目安となります。
また、名刺の制作費も重要な要素です。
名刺は、顧客との接点を持つ機会であり、事務所の印象を与える重要なツールです。
制作費用はデザイン、印刷、紙質などによって異なりますが、一般的には数千円から数万円程度が目安となります。
4-3.広告
さらに、広告媒体の利用費用も検討する必要があります。
新聞、雑誌、インターネット広告など、さまざまな媒体を活用することでより広範な顧客にアプローチすることができます。
広告費用は、媒体の選択や掲載期間によって異なりますが、月額数万円から数十万円程度が一般的な範囲となります。
以上のように、営業活動ツールの制作費用は事務所の存在をアピールし、顧客獲得につながる重要な要素です。
予算やニーズに合わせて、効果的な営業活動ツールを制作しましょう。
5.税理士会への費用
税理士事務所を開業するためには、税理士としての登録費用と年会費が必要となります。
税理士登録費用は、日本税理士会連合会に支払うものであり、会費は所属する税理士会とその支部に支払う費用です。
以下に、税理士登録費用と会費について詳しく解説します。
5-1.税理士の登録費用
まず、税理士登録費用についてです。
税理士登録を行うためには、登録手続きに必要な費用がかかります。
具体的には、登録免許税や登録手数料、入会金などが該当します。
これらの費用は、税理士としての資格を取得するために必要な支払いです。
税理士登録費用は、一般的には15万円から18万円程度が目安とされています。
5-2.税理士会の会費
次に、税理士会の会費についてです。
税理士会は、税理士の交流や情報共有を目的とした組織であり、会費はその運営費用を賄うために必要です。
会費は、所属する税理士会の規模や活動内容によって異なりますが、一般的には年間10万円から14万円程度が目安とされています。
5-3.その他
また、税理士会支部への入会に際しても、支部ごとに入会金が設定されていますので、注意が必要です。
税理士登録費用と会費は、税理士としての資格を維持するために必要な支払いです。
これらの費用は、税理士業界の発展や専門知識の向上に貢献するために使われます。
また、税理士会や支部の活動に参加することで、交流や情報共有の場を得ることができます。
税理士事務所を開業する際には、税理士登録費用と会費に加えて、開業に伴うさまざまな費用を考慮する必要があります。
これらの費用を正確に把握し、事前に計画を立てることで、スムーズな開業を実現することができます。開業に向けての費用計画をしっかりと立て、税理士としてのキャリアを築いていきましょう。
6.結局、税理士の開業・独立に必要な金額の目安は?
これらを合計すると、税理士事務所の開業費用は約200万円程度と言われています。
ただし、これはあくまで一例であり、立地や事務所の大きさ、広告宣伝の方法などによって変動します。
6-1.開業後の運転資金
開業費用だけでなく、開業後の運転資金も必要となります。
開業後すぐに十分な利益が出るとは限らないため、一定期間の運転資金を確保しておく必要があります。
これには、給与や家賃、光熱費、通信費、消耗品の購入費用、税金や社会保険料などが含まれます。
6-2.開業費用の借入
開業費用を全て自己資金で賄うのが難しい場合、開業費用の借入を検討することも一つの方法です。
地方公共団体の制度融資や日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資など、様々な融資制度が存在します。
これらを利用することで、開業資金の調達を助けることができます。
創業融資の支援は、税理士へのニーズが高い分野の一つとされています。
7.まとめ
税理士として開業する際には、上記のような様々な費用が必要となります。
事務所設立費用、事務機器・事務用品の費用、PCやソフトウェアの費用、広告宣伝費用、税理士会入会費など、これらの費用を把握し、計画的に準備することが重要です。
また、開業後の運転資金の準備や、必要に応じての融資の利用なども考えるべきです。
開業するための準備は、単に費用を準備するだけではなく、費用をどのように捻出するか、どのように運用するかという資金計画も含むものと考えることが必要です。
著者Profile
解説:山本雄幸
マーケティング支援の㍿VentureForward代表取締役。
元々は税理士様の集客支援からスタートし士業、コンサル業様のサポート実績多数。
税理士業界では累計3,000件以上の顧問先獲得を支援。
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